後悔という名の代償 Toru Miyase‐4

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綾が再びゆっくりと近づいてくる。 現実から逃げないように、真っすぐ目を向けて。 やがて透の前で車いすのハンドリムを止めると、振り切るように言った。 「ごめんなさい。 私、一度でもいいから愛されたかった。 透くんが百々子さんを想うように、 私も誰かに愛されたかったの」 見上げる綾の瞳から じわじわと涙が滲んでくる。 いつだって綾は、 自分自身を愛してくれるような人はいないと 思いながら生きてきた。 母子家庭に生まれた綾は、 見たくもない母親の女の部分を見せられて育ち、 男を途切れさせずにただひたすらに 男に頼って生きていく母親に嫌悪感を抱いていた。 そしてそんな母親に養われないと 生きていけない自分に吐き気がした。
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