後悔という名の代償 Toru Miyase‐4

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ただ生きているだけで、 悲しみは無条件に降り積もる。 かつてふたつ並んであった洗面所の歯ブラシはひとつになり、 かつて玄関に飾られていた彼女との写真は、 今では跡形もなく、行方がわからないまま姿を消した。 洗面所で歯を磨くたび、 玄関を通り過ぎるたびに、 今はなきかつての痕跡を再認識させられる。 けれどもっとやっかいなものは、 独りになった今では、 どうすることもできない彼女の温もりだった。
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