後悔という名の代償 Toru Miyase‐4

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例えば、かつて肌を重ね合わせたベッド。 例えば、かつて寄り添い合ったソファ。 もうこの場所に彼女はいないはずなのに、 それでもそこに彼女の温もりが確かにある。 それは別れて6カ月経った今でも、 消すことも、なくすことも、 どうすることもできない彼女の残存だった。 百々子と別れてからの半年間、 透は身体を痛みつけるように仕事に打ち込んだ。 新しく配属されたチーム――すなわち敗戦処理の現場では、プロジェクトの収束における会話のみで、 以前のチームにいたときのような 誰かと無駄話をするということはほとんどなかった。 パーテンション型のデスクに向かい合い、 ひたすらキーボードを打ち続け、 身体を孤独な時間に慣らす。 終電で帰る日もあれば、会社に泊まる日もあった。 極力、家にいる時間をさけるようにして、 そういう日々をひたすら繰り返していた。
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