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「急だったから部屋散らかったままだけど、
そこは見過ごして」
相良を先に通すと、玄関に上がるよう促した。
百々子と別れて以来、この家に誰かを入れたのは初めてのことだ。
「おじゃましまーす。
あ、そうだ」
相良は入るなり、持っていた紙袋を透に差し出した。
「これ、少ないけど手土産。
鹿児島名物かすたどん。
彼女と食べてよ。
あ、彼女カスタード平気?」
彼女というワードに心臓がぎくっとした。
百々子と別れた事実を知らないのだから相良に罪はない。
「……律儀だな。
気を遣わなくてよかったのに」
過去に、鹿児島で行なわれた相良の結婚式に出席できなかったことがある。
仕事でどうしても出席できず、
ほんの気持ちとしてお祝いを贈ったのだが、
その後、しばらく経たないうちにお礼の手紙を添えた内祝いギフトを贈ってこられた日のことをふと思い出した。
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