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ふいに顔をあげると、ふわっと風に吹かれたみたいに、
柔らかな髪が目の前を通り過ぎていく。
「百々……」
離れていくその後ろ姿に釘つけになりながら、言葉は無意識に溢れた。
透は一目散に走り出すと、我を忘れて追いかけた。
「百々!」
もう二度と離さないと訴えるように、細い手首を強く掴んで、女性を引き止めた。
切れる息を整えながら、透は愕然とした。
びくっと肩を揺らし、驚いたように振り返ったその女性は、追い求めていた彼女ではなかったからだ。
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