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マンションに帰り着いたのは、それからしばらくしてのことだった。
透は玄関に上がると、照明をつけずに静まり返った廊下を歩いていく。
ふと少し離れた先から、とある部屋が目に留まり、透は足を止めた。
ぼんやりとドアを眺め、すると何かの衝動に駆られたかのように、ドアを開いた。
そのまま吸い込まれるようにたどり着いた先は書斎――かつて百々子と共有していたワークスペースだ。
部屋の壁にぴったり横づけできるサイズのワークデスクをつくり、その中央に収納ボックスで区切りをつけ、互いのエリアをしっかり分けつつ効率よく作業ができるコーディネートになっている。
温かみのある木製のテーブル、清潔感が漂う白い棚と椅子。
木と白を基調としたデスクスペースは、百々子の強い希望で透がレイアウトしたものだ。
しかしながら、実際にふたりで共有できたのはほんの数える程度で、すれ違いが続くようになってからというものの、透が出入りすること自体ほとんどなくなって――
百々子と別れた以降は一度も足を踏み入れていなかった。
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