240人が本棚に入れています
本棚に追加
どうしてだろう。
なぜだか、この日は前触れもなくこの部屋に入ることを突き動かされた。
その理由は分からないけれど、無意識に身体が動いていたのだ。
手前が透のスペース、そしてその向こうが百々子のデスクスペースとなっている。
透はゆっくりと百々子のデスクに近づいた。
温もりを確かめるように、そっと優しく手で触れる。
自分のとは違って、デスクは跡形もなくきれいさっぱり片付いてる。
特に何も考えずに白い椅子を手前に引くと、とあるものに気がついた。
デスクの下に身を潜めるようにして置いてあったのは、段ボールより小さめの収納箱。
不思議に思いつつも、その場に屈んでまじまじと見入る。
少し悩んでから、おそるおそる蓋を開けた瞬間、透は息をのんだ。
お揃いのマグカップや、旅行先で買ったお土産、かつて玄関に飾っていた写真など、二人の思い出の品々が眠るようにしまってあったのだ。
最初のコメントを投稿しよう!