後悔という名の代償 Toru Miyase‐5

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震える指でカードを抜いて中身を広げると、カシミヤのマフラーが姿を現した。 胸がしめつけられるようなたまらない気持ちが込み上げてくる。 ふと視線を下に落とすと、床に無地の封筒が一通、落ちてあるのが見えた。 ――手紙? 拾い上げて表を確かめてみるが、宛名や差出人の記載はまったくない。 何かの弾みで落としてしまったのだろうか。 となると、収納箱のふたを開けたときか? とたんに胸がざわつきだす。 少しの間逡巡した後、透は意を決し、中を開いた瞬間、まるで冷たい電流に貫かれたような衝撃を受けた。 『 透へ。 私の手ではどうしても捨てることはできませんでした。 もしこの箱を見つけたら、そのときは透の手で捨てて下さい。 百々子』
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