後悔という名の代償 Toru Miyase‐5

27/37
237人が本棚に入れています
本棚に追加
/37ページ
ぽたりと、手紙に水滴が弾いた。 それが涙と気づいた瞬間、とめどなく溢れた。 ――どうして。 どうしてもっと、幸せに近づけてあげることができなかったのだろう。 もっと自分の気持ちを伝えてあげたらよかった。 好きだと、俺には百々子しかいないのだと。 もっと二人の時間をつくって、 もっとたくさん話をして、 もっといろんなところにつれていってあげたらよかった。 そしてもっと、抱き締めてあげたらよかった。 様々な後悔がとめどなく押し寄せてきては、それを止めることができなかった。 「ごめん……」 片手で目を覆う隙間から、低く擦れた声が涙と混ざって落ちていく。 「ごめん……百々」 27年間生きて来ておそらく初めて、これほどまでになく泣いた。 涙はいつまでも、いつまでも、絶えずに流れ続けた。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!