後悔という名の代償 Toru Miyase‐5

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ずっと自分に自信がなかったと、透は思う。 「何も持っていない無力な自分が嫌いだった。 誰にも文句を言わせないくらい力をつけて、 大切な人を、百々子を守れるような大人になりたかった。 だから脇目を振らずに働き続けた。 今は目に見えなくてもそれがいつか形となって、 百々子を守れるような大きな力になると本気で信じ込んでいたんだ」 愚かだと思う。 一番大切にすべき人は誰なのか、判断を誤っていた。 「でも、間違ってた。 過去に囚われすぎて、俺は大事なものを見失っていたんだ。 自分のことばかりで、百々子を蔑ろにして、極限まで追い込んで傷つけた。 百々子に別れを告げられたとき、気づいたよ。 見境なく働き続けて、いつの間にか周りが見えなくなっていって、 好きな女が苦しんでいることすら気づけないなんて…… なんだ、俺親父とやってること一緒じゃんって。 父親そっくりな生き方をしている自分に愕然としたよ」 だから、こんな俺じゃ幸せにできないと思った。 「似てないよ。 透は全然、似てない!」
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