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「俺の奥さん、実家は田園調布で裕福な家庭で育ったんだけど、いかにも世間知らずでさ、そりゃぁもう大事に大事に育てられた箱入り娘なわけ。
誰よりも溺愛していた大切な一人娘が、どこの馬の骨ともわからない男と結婚するって言うんだもん。
突然実家を離れて嫁ぐって言われたら、
そりゃ反対するよね。
その上紹介された婚約者は名の知れた企業を辞めて、
得体の知れない実家を継ぐって言うんだから、
親戚中大騒ぎ。あの時は相当参ったよ」
婚約の報告をされたとき、
相良はいつもの調子で笑って惚気ていた。
だから、まさかそんな背景があったとは思いもしなかった。
あの相良が相当参ったなんて言うのだから、
相手側のやっかみは予想をはるかに超えるくらいひどかったのだろう。
「でもどんなに反対されても、
奥さんは絶対に曲げなかった。
俺が一度迷ったことがあって、そのとき、
幸せにできる自信がないって弱音を吐いたんだ。
そしたら、幸せにしてもらうために俺と一緒になるって決めたわけじゃないって、啖呵を切られたよ」
「……」
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