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「急に尋ねたのに、いろいろよくしてくれてありがとね。
久しぶりに宮瀬と飲めて楽しかったよ」
昨夜――あの後、仕切り直すように相良と乾杯した。
酒を飲みながら、くだらない話、真面目な話、大半は相良の話を聞くというスタンスだったけれど、とにかくいろんな話をした。
「礼を言うのは俺の方だよ。
遠いところありがとな。
気をつけて帰れよ」
あんなにたわいもない話をしたのはいつぶりだろう。
百々子と別れてから、いつの間にか誰かと会話することを諦めていた自分に気づく。
すると、相良は表情を引き締めた。
「……昨日、どこに向かおうとしているのかって聞いたろ?
宮瀬が絶賛迷走中であることは話を聞いていてわかったよ。
どんな思いで、彼女を手放した理由もね。
でもな、お前はまだ肝心なことに気づいていないし、
受け止めることもできていない」
透はどきっとする。
一体何を指しているのはわからなかったが、
心臓が妙に落ち着かない感じがした。
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