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「それに気づいて、受け止めて、
やっと自分の気持ちを整理できたとき、
宮瀬が向かう方向が見えてくると思うよ」
相良は真剣な表情を崩して、
白い歯を見せる。
透は真顔のまま、答えることができなかった。
背後から「すみません、そろそろ出発します」と、係員の声がした。
「あ、乗ります。
じゃあまたな」
慌ててバスに乗り込む相良を目で追いながら、
もらった言葉を反芻して胸のうちにおさめた。
やがてバスのエンジンがかかる。
その場を動かずに見守っていると、
唐突にバスの窓が開いてぎょっとする。
言い忘れたことを思い出したかのように、
小さな隙間から顔を覗かせたのは相良だ。
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