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「もう一度この場所から始めたい。
二人であざみ野の家に帰って、一緒に幸せを作っていこう」
透は言葉を切ると、息を大きく吸い込んだ。
「俺の家族になって下さい」
目に涙を滲ませながら、百々子は大きく頷いた。
「うん。私も透を幸せにする。
絶対、幸せにする!」
溢れんばかりの笑顔で宣言すると、透の首に腕を回して抱きついた。
「うん。百々、顔を見せて」
耳元をくすぐる透の声に、百々子は首を振った。
「ダメ……。透の顔を見たら、涙が止まんなくなっちゃう」
「いいよ。
泣きたくなったら俺の胸に飛び込んできて。
そのたびに俺は百々を抱きしめるから」
透の首に回した腕の力を緩めると、そっと透の顔を見上げた。
二人の視線が、再び絡み合う。
そこには、大好きな彼の笑顔があった。
まもなくゴンドラが最高点に到達しようとしたとき、透が顔を傾けて、近づいてくる。
百々子はゆっくりと、目を閉じた。
あの日結ばれたこの場所で、二人は永遠の愛を誓い合うようにキスを交わした。
fin.
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