最終章③ 二人のたどりつく場所

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陽一と別れた後、百々子はみなとみらい線に乗って横浜中華街駅を訪れていた。 そこから中華街、山下公園、赤レンガ倉庫、コスモワールドと初めて透とデートした思い出の場所を巡っていく。 やがて新港地区とみなとみらい中央地区を結ぶ国際橋を渡り、橋の真ん中に差し掛かったところで足を止めた。 行き交う人たちの視線が、百々子の背後を通り過ぎていく。 橋の手すりに腕をついて寄りかかると、左側にそびえ立つコスモクロック観覧車を見上げた。 横浜のシンボルが万華鏡のように夜の街を美しく彩っている。 そこは二人の始まりの場所――。 その瞬間、走馬灯のように透と過ごしたかけがえのない日々が脳裏に蘇る。 水滴が一粒、頬を流れ落ちた。 それが始まりの合図かのように、とめどなく涙が溢れ出した。
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