371人が本棚に入れています
本棚に追加
陽一と別れた後、百々子はみなとみらい線に乗って横浜中華街駅を訪れていた。
そこから中華街、山下公園、赤レンガ倉庫、コスモワールドと初めて透とデートした思い出の場所を巡っていく。
やがて新港地区とみなとみらい中央地区を結ぶ国際橋を渡り、橋の真ん中に差し掛かったところで足を止めた。
行き交う人たちの視線が、百々子の背後を通り過ぎていく。
橋の手すりに腕をついて寄りかかると、左側にそびえ立つコスモクロック観覧車を見上げた。
横浜のシンボルが万華鏡のように夜の街を美しく彩っている。
そこは二人の始まりの場所――。
その瞬間、走馬灯のように透と過ごしたかけがえのない日々が脳裏に蘇る。
水滴が一粒、頬を流れ落ちた。
それが始まりの合図かのように、とめどなく涙が溢れ出した。
最初のコメントを投稿しよう!