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どこにいても、どんなときでも、頭に浮かぶのは透の顔、そして透と過ごした日々だった。
この2年間、透のことを思い出さないように過ごしてきた。
忘れたくて、忘れたくて、
でも忘れたことなんて一度もなかった。
――どうしてあの時、透の手を離してしまったのだろう。
目に見えない孤独と戦ってきた彼を苦しめるすべてのものから守ってあげたいと、
私が守るんだと、固く誓ったはずだったのに。
桜木町駅で綾と再会した時、彼女は言っていた。
透が力を貸してくれたのは、母親への罪滅ぼしのためだったと。
透は母親と同じように痛みつけられている綾のことを、どうしても見捨てられなかったのだ。
もしかしたら助けていたのは、綾ではなく、記憶の中の母親だったのかもしれない。
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