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しかしあの時、透の気持ちを考えようとせず、傷つくのを恐れ、また一人ぼっちにしてしまった。
透の気持ちに寄り添い、受け止めてあげること。
ただそれだけでよかったのに。
それができるのは、他の誰でもない自分しかいなかったのに。
それどころか、透の足枷になりたくなくて、疎まれるのが怖くて、母親が倒れたことすら伝えられなかった。
でも今ならわかる。
仕事が忙しくてすれ違ったわけではない。
透と向き合おうとしなかったから、すれ違ったのだ。
その瞬間、心の奥に封印してきた想いが限界を超えて膨らみ、風船が割れるように一気に解き放たれる。
一目もはばからず、ひとしきり泣いた後、ぐいっと手のひらで涙を拭い、夜空を見上げた。
もう自分の気持ちから逃げない。
透に会いにいく。
会って、自分の想いを伝えにいく。
こんなところでウジウジしているのは自分らしくない。
“何があっても自分の足で走っていく”――それが私のはずだ。
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