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「どうしてももう一度百々と話がしたくて、ずっと探していたんだ。
そしたらたまたま朝比奈さんに会って、そのとき百々の居場所を尋ねたら、“思い出の場所にいる”って教えてくれて……。
もしかしてと思って駆けつけたら、百々に会えた」
透は苦しそうに息継ぎをする。
百々子はたまらず走り出した。
一歩ずつ、また一歩ずつ、噛みしめるように近づいていく。
引き寄せ合うように二人の距離が縮まる。
やがて足を止め、真っすぐな視線が交差した。
街は音をなくし、乱れた呼吸音だけが聞こえる。
そこだけ空間が切り取られ、世界に二人しかいないようだった。
百々子の瞳から、また一筋の涙がこぼれ落ちる。
数秒の間の後、透は拳にぐっと強い力を込め、声を振り絞るように言った。
「十一年前、俺が百々の泣き場所になる、俺が百々を守るんだって誓ったはずなのに、いつからか、俺は自分の弱さばかりに目を向けて大事なことを見失っていた。
百々がつらいときに一緒にいてあげられなくてごめん。
一人で泣かせてごめん。
我慢ばかりさせてごめん。
ごめん、百々……」
一目もはばからず、透が苦しげな表情で訴える。
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