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百々子はぎゅっと目を閉じて、頭を振った。
「私こそ、透の弱さを受け止めてあげられなくてごめん。
透の苦しみに気づいてあげられなくてごめん。
一人にしてごめんね」
「違う。百々は何も悪くない。
俺が弱かったのがいけなかったんだ。
社会人になってからの俺は、力をつけることに必死だった。
社会的な地位を築くことが、大切な人を守る力になるんだと本気で思い込んでいた。
自分のことばかりで、百々の気持ちをないがしろにしてばかりだった」
その言葉を否定するようにまた頭を振る。
はらはらと涙の粒が空中に舞った。
透は目を伏せ、自分の愚かさを責めるように続けた。
「俺は弱いくせに、強いふりをしていた。
自分の弱さを見せることが怖かったんだ。
母親のように、いつか百々が俺から離れていってしまうんじゃないかって。
俺といても百々は幸せになれないんじゃないかって、ずっと恐れていた」
「バカ。私の幸せを勝手に決めつけないでよ。
私の幸せは私が決める。
私は透がそばにいてくれたらいいんだよ。
それだけで幸せなんだよ」
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