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百々子は身体の芯から声を上げるように訴え続ける。
「透のこと、何度も忘れようとした。
でも、ダメだった。忘れられなかった。
どこにいても、どこに向かっても、透の顔が一番に頭に思い浮かぶの。
透じゃなきゃダメなの。
透の隣じゃないと幸せになれないよ」
「百々……」
透は足を踏み出し、距離を縮めていくと、力強く百々子を抱きしめた。
百々子もぎゅっと強く、透の温もりを受け止める。
「百々がいなくなって死ぬほど後悔した。
失ってやっと気づいたんだ。
百々がいない未来なんて考えられない。
俺が百々じゃないとダメなんだ」
耳元で放たれた透の想いが、二年ぶりに感じる彼の匂いが、百々子の胸を熱くする。
百々子は透の腕の中で、涙を噛みしめながら微笑みを返した。
「弱い自分を見せるのが怖いって言ったよね。
弱くていいんだよ。
一人で抱え込まなくていい。
透が背負う荷物は私も一緒に背負うよ。
だから、これからはその荷物を私にも分けてほしい」
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