最終章③ 二人のたどりつく場所

9/11
前へ
/17ページ
次へ
喜びも痛みも二人で分け合って、共に生きていきたい――。 透は抱きしめる力を緩めると、百々子と視線を絡めて、小さく微笑みながら頷いた。 「好きだ。百々が好きだ。 もう二度と離さない」 「うん。ずっと離さないでいて。 私も透を離さないから!」 百々子が元気いっぱいにそう言うと、透は再び百々子を腕の中に引き寄せた。 そして、もう一度耳元で「好きだ」と囁くと、 百々子を力いっぱい包み込むように抱きしめた。 百々子たちの背後を、観光客が歩いてく気配がする。 「いいの? みんな見てるよ」 恥ずかしそうに尋ねる百々子に、透は優しく微笑んだ。 「いいよ。今はただ抱きしめていたい」 その言葉に、百々子も微笑んで頷く。 場所も時間も忘れて、二人は抱きしめ合った。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

372人が本棚に入れています
本棚に追加