第1章 かくして俺は転職を決意した

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第1章 かくして俺は転職を決意した

サイコロ転がして 一の目が出たけれど すごろくの文字には ふりだしにもどる 君はきっと言うだろう あなたらしいわねと 一つ進めたのなら 良かったじゃないの、、、、、 リビングのテーブルには4枚複写になったA4サイズの紙が置かれている。 用紙の一番上には四角い二重枠で囲まれたえんじ色の『退職届』という3文字が踊っている。 休日の午後。 外は冷たい雨が降っていた。天気予報によれば、夕方以降、雪に変わるのだという。 窓の外に見える空は、白い絵の具の上に黒い絵の具を筆で溶かしたみたいに濁ったモノトーンの世界を映し出していた。 見ただけで憂鬱な気持ちになる空が、俺にはなぜか懐かしく感じた。 まだ、希望という二文字を胸に掲げ、前に進んでいた頃、毎日のようにこんな空を眺めていた。その街は、一年の約4分の一が雪に覆われるところだった。空一面がどんよりとした雪雲に覆われ、太陽はその役目を忘れてしまったかのように空から忽然と姿を消した。陽光が差すことのない雪に覆われた街は、全ての色彩を失い、どこまで行ってもモノトーンの世界だった。それは、ほんの数年前のことであったが、今となっては、もう決して手に届かぬ遠い遠い昔のことのように思えた。     
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