第零章 始まり

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7年前の話。 当時私は10歳だった。 宝条院という大きな家に産まれた。 私は何不自由もなく暮らす世間知らずの子供だった。 食べる物も着る物も欲しい物もなんでも手に入っていた。 そんなある日の夜だった。 外からいきなり悲鳴が聞こえた。 一人、二人、三人と悲鳴は悲鳴を呼んでいった。 敵襲だった。 宝条院家は日本の御三家にあたる一族。 外からの襲撃はそう珍しいものでもなかった。 たとえ襲撃があったとしても、 宝条院家には人間の身体能力を超越した「天ノ川一族」という戦闘に特化した者達がいるため、 今回の騒動も早めに鎮火するものだと思っていた。 しかし、いっこうに外の静まる気配はない。 むしろ時間がたつたびに悲鳴は数を増し、 あちらこちらでは火が立ち上がってきていた。 何十回という戦の地に勝利の旗を掲げてきた天ノ川一族が次々と倒れて行くのを私は城の一番上の小窓から見ていた。 私は敵が一体どれだけの軍勢で攻めてきたのか確かめるべく、東西南北の小窓を繰り返し見た。 見た結果。 敵はたったの7人だった。 たかが7人で御三家の一つにして、 無敗の天ノ川一族をひきいる宝条院家がこうも容易く襲撃され制圧されそうになっている理由は10歳の私にもわかっていた。 それは7人が手にしている呪いを帯びた刀が原因だった 次々と死んでいく天ノ川一族を見た家臣達は私を逃すため秘密の地下階段へ少数精鋭で隠密に行動することにした。 城にいくつかある隠し階段を敵にみつからないように選びながら下へ降りて行くと、 耳に入ってくるのは悲鳴と断末魔だった。 城には火が付き何カ所か行けない隠し階段があり、 その度に別の隠し階段へ行くため敵がいるかもしれない大広間や廊下などに出ていく。 出るたびに何十人という屍が私の目に入ってくる。 床は血の海で、 血と血が混ざり合い黒くなり、 足には人の臓器や肉片を踏む感触が伝わってくるが、 そんなのに一々構っていられないほどに私は大人達に手を引っ張られながら走っていた。
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