第零章 始まり

3/3
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
無事に秘密の地下階段にたどり着く。 階段を下りていくと地下通路があり、 これを真っ直ぐに行けば逃げられる。 心が不安から安心に変わり安堵のため息を私は吐いた。 だが、そのときだった。 奥の方から私達に向かってくる人影が見えた。 私を囲んでいた大人達は刀を抜き闘う準備をしていた。 こちらは6人いる。 数的には勝っている。 だから大丈夫。 自分に言い聞かせるように呟いた私。 前から歩いてくる人も刀を抜くため右手で鞘から刃を出した。 抜いた瞬間だった。 男が抜いた刀から紫色の気を放った刃が出てきた。 その色は美しくも不気味だった。 あれは呪いを帯びた刀だと気づいたときにはもう遅かった。 紫色の気を見た大人達は不気味な笑みを浮かべながら、 自ら首や腹に刀を刺し自決していった。 一瞬にして私の足元は囲んでいた大人達の血がいっぱいになった。 私は震えた。 恐怖と絶望で視界はぐるぐる回り、 鼻の奥は死臭で満たされ、 息を吸うも吐くも喉をしめつけ、 額からは汗が吹き出し、 全身の筋肉は硬直し動かず、 無意識のうちに失禁しかけていた。 前からは一歩。 また一歩と近づく足音がする。 にげなくきゃ! そう思ったが時すでに遅かった。 大人達の死体から流れた血を踏みながら、 呪いを帯びた刀を持った人は目の前まで来た。 振り上げられる刀 ダメだ!もうダメだ!‥死ぬ 死を覚悟した私は最期にその人の目を見た。 私を殺す人はどんな目をしているか、 それだけは確かめたかった。 私は力をこめて顔を上げてその人ノ目を見た。 するとその人は泣いていた。 大粒の涙を滝のようにして泣いていた。 目と目が合い沈黙流れると、その人は一言 「ごめんなさい」。 と言って刀を振り下ろした。 この世はまだ刀という凶器で人を殺していた時代。 弱い者が死に強い者が生きる弱肉強食。 そんな世界を生きた者達の話し。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!