4:偏見と牽制

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 真己の性格上、大勢で群がるよりも一匹狼でいる方が多かったので、真己を良く思っていない連中が、ここぞとばかりにねちねちと攻撃をしかけてきた。攻撃といっても、真己に力勝負で勝てないことを知っているため言葉の方で、だったが。とにかく真己のお母さんのことや一緒にご飯を食べることに関して、とやかく言ってくるのだ。 「おい本橋。お前、榎本んちで飯食ってるんだって?よく恥ずかしくないよなー」といった具合である。  休み時間は遊ぶことに夢中になるので、こういったことは掃除の時間に起こる。ちゃんと掃除をするようにと、何度も注意したところで聞く耳を持たない。いい加減うんざりする。 「お前の母ちゃん、水商売ってやつやってんだろ?うちの母ちゃんが言ってたぜ、そういう商売するのは、ろくでもない奴が多いって」 「何だと?」 「ちょっと!真己のお母さんのこと悪く言わないでよ!」  これにはさすがの真己も怒りの表情を見せ、私もついに口を出した。真己をからかっていた数人の男子は、一斉に注目を浴びたということもあり少したじろいだ様子を見せたが、すぐに向き直り吠え立てる。 「だから子供も非行に走るんだってさ」  ぎゅっと、ほうきを持つ手に力が入った。 「バッカじゃないの!真己が非行なんて走るわけないでしょ?それに、おばさんは素敵な人よ。優しくて綺麗だし、何より気が利く人じゃないと商売なんて出来ないんだから」     
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