4人が本棚に入れています
本棚に追加
口では負けない自信があった私は、ぷいとそっぽを向く。言い返せなくてさぞや悔しいだろうと思いきや、そういった連中は負け犬の遠吠えをするものだというのを忘れていた。
「うるせー、女は黙ってろ!」
ぶち。どこかで堪忍袋の緒が切れる音がした。
私は持っていたほうきを大きく振り上げ、今の今まで喚いていた男子のお尻に向かって思い切り振り下ろした。
バンッという鈍い音と共に埃が周囲に巻き上がる。
ごほごほとあちこちで聞こえる咳をバックに、私は毅然とした態度で話しかけた。
「そういうの、偏見っていうのよ。偏見を持っている人こそ、ろくな大人になれないわ。でも真己は違う。偏見なんてもってないし、色んなこと知ってて頼もしいんだから。それに、真己と一緒に食べるご飯はとってもおいしくて楽しいのよ。おいしくご飯を食べてるだけなのに、何で文句を言われなくちゃならないの?あんたたちと一緒に食べるご飯はさぞかしまずいんでしょうね!」
私がこんな啖呵を切れたのも、それだけ真己との食事が楽しかったということだ。だから真己の転校まで続いたのだし、真己がいなくなった後は何か物足りない気がした。
そういえば、転校の時に励みになったという例の言葉は、この啖呵を切った後に言ったと記憶している。
最初のコメントを投稿しよう!