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でも、あの時は本当に嬉しかったなぁ。ナンパから助けてもらったのもそうだけど、それ以上に真己に会えたのが嬉しかった。何せ、転校してから一度も連絡をとっていなかったから。
私は、順調に行けば大学卒業を一年後に控えていた春に、両親への懸命の説得で一人暮らしを始めることにした。すごく中途半端な時期だとは思ったが、大学までの道のりが遠く、後二年近くも我慢することは嫌だったのだ。決して両親が嫌になった訳ではないと強く主張したら、最低でも月に一回は実家に帰ることを条件に許してもらえた。
その日は無性にコンビニ限定のデザートが食べたくなり、22時を回っていたのにもかかわらず、着の身着のまま歩いて5分のコンビニへ行った。
50mくらい先にコンビニの明かりが見えた頃、ナンパをされた。歩道側に車を寄せつつターゲットの女性の歩調に合わせて車を進ませる、いわゆるナンパ車である。
ウィンドウが開き、中からいかにもスケベそうな男が、いやらしい笑みを浮かべて私に声をかける。
「ねえねえ、一人?それなら、ちょっと俺達と話でもしよーよ」
私は露骨に迷惑そうな顔をして早歩きで向かう。しかし、相手は車なので速度調整は簡単だ。
男は返事のこない質問を2、3繰り返し、とうとう車の中に引っ込んだ。
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