1:帰宅

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 そもそも事故が原因だと知ったのは昨日のお通夜だった。これもやりきれない要因の一つ。もし事故に遭った人達が駆けつけてくれなかったら、ずっと謎の死のままだった。 「今まで何事もなく過ごしてきた青年が、仮眠から再び起きることはなかった」とか何とか言って、奥様たちの井戸端会議のいいネタになるだけだ。  たまたま真己が一人で歩いている時に、たまたま知り合いの子供が車にぶつかりそうになり、助けた真己が転がる先にコンクリートの塀があって、運悪く頭を強く打ったということだ。  全くなんてことだろう。  真己は人の面倒をみるのは好きなくせして、自分のやったことで人の世話になることを嫌がる節があった。だから今回のことも誰にも言わなかったのだ。  それにしても、そんな大事なことがあったのなら教えてくれればよかったのに。「頭が痛いからちょっと寝る」だけじゃ、疲れてるのかな?くらいしか考えないわよ。もし事故のことを知っていたら、引きずってでも病院に行ったのに。全く、真己のバカ。  でも、真己がそういう性格で、病気という病気もしたことがないのを知っていて何の対処もしなかった私もバカだ。バカバカ。  怒りの矛先が見つからない私は、苛々し、どうしようもないことにただ頭を巡らせた。
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