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「…クシャン!」
僕が大きくくしゃみをするとその子は鞄からハンカチを差し出してくれた。それと傘も。
「ちょっと待ってね」
このハンカチは使っていいのかな。多分いいんだろうと判断して濡れた顔を拭いた。
女の子、どこに行ったのかな…。しばらくすると湯気の立つ紙コップを持って戻ってきた。
そしてハンカチと交換で今度はその紙コップを受け取った。温かい。
「コーヒーだと苦いし、ココアにしたの」
「これ、僕に?でもお金とかないし…」
「いいよ、そんなの。飲まないと風邪ひいちゃうよ」
笑顔に邪気がなく僕はそっとココアを口にした。
甘くて優しくて、温かい。天界の飲み物みたいだ。
ゆっくりと味わいながら飲むと女の子は満足げに微笑んでいる。
「それじゃあ帰ろうか」
「あ、ありがとう、ございました」
「違うよ、君も私と一緒に帰るの」
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