【天使ではない僕】

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「服もぴったり。別れたとき自棄になって全部処分するつもりだったけど、こうして役立つとはね」 笑いながらカップに口をつけた。 「どうして彼は白石さんみたいにいい人と別れたの?」 「あは、それ聞くか?うーん、私なんて普通だよ。 大学行ってバイトして、友達と遊んで、彼とは高校から付き合ってた。 だけど平凡な私に飽きたんだって」 なんだそれは。平凡で飽きた?こんなに心優しい人を悲しみに染めるなんて許せない。 「それより聞いてもいい?なんで傘も差さないであそこにいたのか」 「えっと、ね…」 どうしよう。罪を犯して追放された天使なんですなんて言ったら警戒されてしまう。 ここは嘘をつくしかない。神よお許しください。 「…生まれてからずっと入院してたんだ。退院できたのは少し前で… 外の世界を知りたくて歩いていたら雨が降ってきてしまって…」 「そっかあ。どうだった?外の世界」 外の世界は…人間の醜い感情のせいで酷い臭いだし、頭が割れそうに痛いです。 ・・・とは言えない。 あ、でもこの部屋はすごく穏やかな香りで心が落ち着く。 「びっくりの連続。一番びっくりしたのは白石さんとこうしてここにいること」 「ふふふ、そうだよね。入院期間が長いからそんなに真っ白な肌なのかな」 「あ、気持ち悪い?」 「まさか!羨ましいくらいだよ。知ってる?女の子が美白にどれだけお金をつぎ込んでるか」 どうやら肌の色についてはおかしくなかったみたい。 この日は夜遅くまで白石さんと話していた。 そしてソファーベッドが僕の寝床になりゆっくりと眠った。
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