2人が本棚に入れています
本棚に追加
「すごい、綺麗。こんな歌声初めて…おかしいなんか泣けてきた」
泣いてくれてよかった。悲しみに心囚われるより泣いて心を洗ってほしかったんだ。
泣き止んだ白石さんはスマホを指で叩いた。
「元カレがね…私の友達と付き合ったみたい…」
それはSNSというので知ってしまったらしい。楽しそうに顔を寄せて笑っている写真があったと。
二股掛けられてたかな?私ってば鈍感だー、と無理した笑顔で話してくる。
今度は歌ではなく白石さんと隣に座ってそっと頭を撫でた。
最初こそ驚いていたけど素直に頭を撫でさせてくれた。
そしてまた綺麗な瞳からポロポロと涙がこぼれてくる。
「…!!…!!」
「いいよ、沢山泣いて。僕はここにいるから。独りじゃないよ」
「ありがとう…。もう私天野君といると泣いてばかりだ…!」
優しい心、その心はとても純粋。
酷い人間はその純粋を平気で砕く。
それを聞いたとき僕には到底理解などできなかった。
なんで優しい人の心を醜い人が壊すのか、いったいどんな権利があるのか。
それはきっと一生分からない。
最初のコメントを投稿しよう!