【天使ではない僕】

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「すごい、綺麗。こんな歌声初めて…おかしいなんか泣けてきた」 泣いてくれてよかった。悲しみに心囚われるより泣いて心を洗ってほしかったんだ。 泣き止んだ白石さんはスマホを指で叩いた。 「元カレがね…私の友達と付き合ったみたい…」 それはSNSというので知ってしまったらしい。楽しそうに顔を寄せて笑っている写真があったと。 二股掛けられてたかな?私ってば鈍感だー、と無理した笑顔で話してくる。 今度は歌ではなく白石さんと隣に座ってそっと頭を撫でた。 最初こそ驚いていたけど素直に頭を撫でさせてくれた。 そしてまた綺麗な瞳からポロポロと涙がこぼれてくる。 「…!!…!!」 「いいよ、沢山泣いて。僕はここにいるから。独りじゃないよ」 「ありがとう…。もう私天野君といると泣いてばかりだ…!」 優しい心、その心はとても純粋。 酷い人間はその純粋を平気で砕く。 それを聞いたとき僕には到底理解などできなかった。 なんで優しい人の心を醜い人が壊すのか、いったいどんな権利があるのか。 それはきっと一生分からない。
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