13.恩人

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彼女たちを背に再び歩き出し、少し離れてから妻が口を開く。 「あの子達、お礼はちゃんと言ったけど、誰も父ちゃんに向かって言ってなかったね。 謙斗に向かってばっかりで、・・・なんか、ムカツク。」 さっきの優しそうな妻はどこへ行ってしまったのか。 「父ちゃんにお礼を言っていたのは、あやさんだけじゃない!誰が助けたと思っているの?失礼だよね!」 妻の不満は止まらない。 「でも、父ちゃんも溺れたし・・・・・・。」 幸太が鋭く突っ込む。 「父ちゃんがあやさんを助けたことに変わりないでしょ?!」 妻が言い返す。 「どうでもいいよ、そんなこと。とりあえず助かったんだから。お盆の海は危ねーってよく、じいちゃんが言ってたからな。お前らも気をつけろよ。」 溺れた私が言っても説得力に欠けるが。 「でも、釣りに来てるし。」 「殺生してるし。」 幸太の突っ込みに謙斗が続く。 「今年だけな。いいだろ?沢山釣れたから?」 「父ちゃんは釣れてないけどね。」 いちいち鋭い幸太の突っ込みが心地いい。
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