14.感謝

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たまに、妻の料理のレパートリーにはありえない食材でも、ひきつりながらも妻は受け取ってくれる。実際そうした食材のミイラを我が家の冷蔵庫で何体も発見したことはあるが、受け取って喜ぶおふくろの顔を見る方が、ミイラを発見する驚きに勝る。 「じゃあ、帰るね。明日は来れないから。」 横で妻が少し不思議そうに私を見る。 「あら、そうなの?残念ね。」 おふくろは残念そうな顔をする。 「ごめん、ちょっとやりたいことがあって。」 「それから、おふくろ、客間のラジオだけど、お盆はいつも点けといて!」 「どうして?」 「なんとなく、親父が聴いている気がして。」 「あ、そうだ。」 私はズボンのポケットから電池を取り出して母に渡した。 「鳴らなくなったら、これで。」 「・・・・・・わかった。実は私もあそこにお父さんがいるような気がしていたから。」 “さすが夫婦!”と少し感心した。
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