特になし

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 まだメルヴィルも安倍公房も読みきっていないのに読書の情熱は僕から霧散してしまった。  ミステリも純文学もノンフィクションもなんでも来いだった僕は、もはや読書で楽しめなくなってしまう。何を読んでも数ページで投げ出してしまう。「本当にこれが面白いのか。」この質問に確信を持って返答できない。本屋に行って面白い本を探すが、どれも目に留まらない。なんとなく読みたい物語は僕の頭の中にあるのに、それはどこにも見つからない。  20分もかけて本を探したのに、結局僕は何も買わずに出てきてしまう。  理想の本は僕のイメージの中にしかない。それはこの世のどこにもない。  考える。なぜ読書の神は僕から離れて行ったのか。自我を得てから20年、ずっと僕の隣に居座っていてくれたのに。  代わりに僕は物語を作るようになる。頭から溢れるイメージで文章を紡ぐ。おぼつかない。誤字の山。
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