特になし

3/5
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
 いくつか僕は短編を書く。推理もの、日常もの、メッセージ性の強いもの、まるっきり悪ふざけのもの。  何を書いても自分の探し求めている文章である気はしない。僕の中に僕の求める何かはあるはずなのに、僕の中にはそれを表現する言葉がない、感情がない。  本を書くためには、本を読んだり書いたりする以外の経験が必要なのだ。自分の全部が揺さぶられるような、本物の感情が必要なのだ。それが僕には圧倒的に足りない。  それから僕は、読書から少し離れ、いろんな初めてのことをしてみる。裁判を見に行く、オンラインゲームをする、友達を裏切ってみる、仕事をさぼってみる、電車で席をゆずってみる、偉い人の講演を聞いてみる、いろんな国に旅行に行ってみる、エトセトラ、エトセトラ。  そして、少しずつ初めての感情を文章として貯めていく。僕の理想を、僕の感情を表現するための言葉たち。 
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!