特になし

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 僕は考える。僕の中で一番の核は何だろう。僕の人生の中で一番の問題、経験、感情。  寂しさだ。愛の欠乏だ。それが僕をずっと突き動かしてきた。  両親が共働きだったこと。4歳くらいの時に外国の親戚に1年ほど預けられたこと。1年の間に両親の存在と日本語を忘れたこと。日本に戻ってきてからも寂しかったこと。学校行って、帰ってきて、夜ご飯を炊いて、寝るサイクル全てに寂しさがついて回ったこと。ずっと、ずっと寂しかったこと。  たぶんこれが僕の原体験だ。寂しさのおかげで僕はいろんな経験をすることが出来た。寂しさは現状への不満を生み、現状への不満は行動を生む。寂しさ故に僕は悪いことをして注意をひいたり、逆に勉強をして急に成績を上げたり、部活に入って自分の時間を拘束したり、声が大きかったり、わざとクールな振りをしてみたり、やばい寝癖をわざと直さなかったり、女の子に惚れっぽかったりするのだ。   寂しさが生む強さは僕に一時的に快感を生むけど、これが長続きしないことはわかっている。今までずっとその繰り返しだったのだ。こんなこと、一生やっていくつもりは更々ない。ずぅっと勝負し続けるような人生は、もっと満ち足りて育ってきたやつにくれてやる。  そして僕はこの寂しさが未来永劫に僕の中から消え去り、安心だけが残る物語を書きたい。そんな寂しい時代もあったなと。枕が濡れる夜もあったなと。悪いことも良いこともしないで、それでも今のありのままの自分に満足できるような安心感が欲しい。     
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