Chapter1 初恋の人

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身内を亡くした……。 予想だにしない言葉に戸惑ったけれど。 ……亡くなったのって、もしかしてお兄さん? なぜかは読んだ瞬間に、ふとそう思ってしまった。 鈴木くんには、お兄さんと、あと確か、弟のことを彼が口にしたのも聞いたことがある。 たぶん3人兄弟だ。 弟のことは殆どわからないけれど。 わたしは、6年前のあの時、彼がお兄さんの話を避けたことが、とても引っ掛かっていた。 そして、身内を亡くした、という言い方も、なんだか違和感を覚えたのだ。 わたしだったら、父が祖父が妹が、という言い方をする気がしたから。 でも、そんなことは勿論訊けないし、代わりに「そうだったんだ」と返事をした。 『死んだら本当に、二度と会えない。だから、おばあちゃんにはちゃんと、会えるうちに会った方がいいよ』 「うん、そうだね」 身内を亡くしたばかりなら辛いはずなのに、わたしに親身になってくれる気持ちが、とても嬉しかった。 「できるだけ会いに行くようにする」 わたしがそう返すと、親指をくいっと立てた猫のスタンプが送られてきた。
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