Chapter1 初恋の人

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演奏を終えたと同時に、パチパチパチと拍手の音がした。 「えっ…………いつの間に?」 鈴木くんがピアノのすぐ近くの机に、ちょこんと腰かけていたのだ。 演奏に夢中で、全く気づかなかった。 「奈々ちゃんって、こんな激しい弾き方もできるんだね」 「この曲ね、わたしにはちょっと難しいから、勢いでぱーって弾いちゃってるの」 「全然ミスなかったけど?完璧でしたよ」 鈴木くんはそう言って、机からぴょんと降りた。 「奈々ちゃんってピアノ何年習ってるの?」 「えっと……実はわたし、習ったことないの」 「え?まじで言ってるのそれ」 鈴木くんは目を丸くした。 「家にピアノがあるだけ。だからすごい下手くそなの。楽譜もあんまり読めないし」 「いや、全然下手じゃないし!それに、楽譜読めないのに弾けるって、耳コピってことでしょ?え、今の悲愴も?」 「う、うん。少し楽譜も見たけど……」 「すごい才能だよそれ」 「そ、そうなのかな」 誉められているんだろうけれど、自分ではあまりピンと来ない。 「うん!ほんと羨ましい。俺なんて才能ないから、ガキの頃、死ぬほど練習させられたもん」 「鈴木くん、子供の頃から習ってるの?」 「うん、3才から。でも、兄貴の方が昔からうまくて…………あ」 「鈴木くん、お兄さんがいるんだ?」 「……あーうん。でも、この話は終わり!」 鈴木くんは、なぜかお兄さんの話をやめて、代わりに、 「あ、俺もなんか弾こうかなー」 にっこり笑ってそう言った。
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