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「鈴木くん、ありがとね」
『いえいえ』
『てか、俺もちゃんと会いに行こうかな』
鈴木くんからそんなメッセージが届く。
「えっ誰に?」
『すごく会いたい人に』
「誰かに会いたいの?」
聞き返すと、すぐに返事が返ってきた。
『俺ね、奈々ちゃんに会いたい』
鈴木くんが、わたしに会いたいと言ってくれた。
胸がきゅうっと切なくなった。
昔の鈴木くんは、わたしにとって初恋の人。
忘れられなくて、ずっとずっと会いたかった。
今だって。
でも、それは恋心なのかどうかわからかった。
彼の思い出に、ずっとすがっているだけかもしれなかった。
そんな彼と、また連絡を取り始めて。
いつもメッセージ通知が届くたびに、胸が弾んだ。
開いてみて、それが他の人からだと少しガッカリして、鈴木くんからだと自然に頬が緩むのだ。
わたしは、あの頃に戻りたいんじゃない。
今の鈴木くんを知りたい。
今の鈴木くんに会いたい。
「うん。わたしも鈴木くんに会いたい」
今の姿も声も、何もわからないのに。
わたしはもう一度、あなたに恋をしている。
だから、あの言葉の続きを、今度こそちゃんと、聞かせてほしい。
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