Chapter1 初恋の人

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◇◇◇ 「あーあ、テスト散々だったなあ」 放課後、北校舎への渡り廊下を歩きながら、有希ちゃんはそうぼやいた。 先週末に終わった期末テストの結果が、週明けの今日、早くも返って来たのだ。 2年生は全部で130人、この人数を採点するのに、もしかして先生達は休日にも働いているのだろうか。 「でもテストも終わったし、もうすぐ夏休みだね」 「うん、そうだね」 「奈々ちゃんは、夏休みどこか行くの?」 「たぶんどこも行かないかなあ」 「家族で海とか行かないの?……あ、水着!教室に忘れてきちゃった」 「え、ほんと?じゃあ取りに戻ろ」 「付き合ってくれるの?奈々ちゃん優しい」 わたし達は教室へと引き返した。 「ごめんね、奈々ちゃん。付き合わせて」 「ううん、全然」 教室に入ろうとすると、中から何やら話し声が聞こえてきた。 「オレはやっぱり松田すずちゃん。あのお嬢様な感じがたまんないよね」 「へえ。なんかお高く止まってない?」 「てか一番は小林でしょ」 数人の男子達が、教室で何かを話しているようだ。 「…ねえ、なんかクラスの女子の話してない?」 有希ちゃんが小声で言った。 「誰が一番可愛いみたいな話かなあ」 「たぶんそうだね。……なんか、入りづらいね」 またあとにしようか、なんて言っていたら、 「湊は?誰がいいの?」 そんな声が聞こえて、思わず息を飲んだ。 鈴木くんがそこにいるの?!
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