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「動くなよ。代官を死なせたくなければおとなしく従え」
それを見て、背後に控えていた祐筆(※書記)も慌てて腰を浮かすが、殺気を帯びた鋭い眼光を向けて貞蔵はその動きを封じる。
「俺の刀を持って来て、そのまま逃してくれればそれでいい。誰か呼ぶような真似をしたら代官の喉笛に穴が開くと思え」
「貴様、そのようなことをして無事に…うぐっ…」
「代官の一人や二人殺すくらい、今の俺にとっては大事の前の小事。悪いが俺は本気だ。こんなところで油を売っている暇はないんでな……」
そして、口を開こうとした代官の首にわずか血が滲むくらいに刃を食い込ませると、蛇に睨まれた蛙が如く中腰のまま固まった祐筆に、改めてそれが脅しでないことをドスの利いた声で伝えた――。
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