第1戦 ぼくとタオル

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「ひろ!風呂入れー」 今日も闘いのゴングが鳴り響いた。 ぼくはさっそうとお風呂場へ向かう。 授業中に考えたとっておきの方法を胸に。 そう、空気の量が多ければいいんだ。 空気を下から入れられれば!! ぼくはタオルを湯船に浮かべた。 そして息を思いっきり吸って 鼻をつまんで潜った。 タオルの下へうまく入れた。 ミッションワン成功だ! そしてタオルに向かってぶくぶくぶく… そう、ぼくは自分の息を 吹き込む事を考えた! この事を考えついた時、天才だと思った。 できる限り息を吐いてから地上に戻った。 大きな空気ができているはずだ。 なのに現実は甘くなかった。 ぼくが地上に上がったしょうげきで 空気が逃げてしまっていた。 そんな! ぼくの計算は完璧だったはずなのに! ぼくはまたもぐって息を吐いてを 繰り返した。 なのに空気が逃げたり、 ゆっくり時間をかけすぎて しぼんでしまったり。 ぼくは荒く息をしていた。 まさか、こんなにも敵が強いなんて… 絶望のふちに立っている気分だった。 するとガラガラっと音がして 兄ちゃんがのぞいてきた。 「ご飯だって何回も呼んで… …タオル浮かべてなにしてんだ?」 もぐっていた為にご飯の声に気づかなかったらしい。 今はきさまらにかまっている 時間はないんだ!! そう思いつつもうやれる事がなかった ので兄ちゃんに空気がうまく入らない ぼくのしれつな闘いを教えた。 ちょっと考えた兄ちゃんが 「ちょっと待ってろ」 そう言って何処かに行ったと思ったら ペットボトルを持ってきた。 そしておもむろに浮かべたタオルの下に ペットボトルを沈めて タオルの中に空気を ボコボコ… な ん だ と ? 道具を使うだなんて…? これが現代の力というのか? そして空気をある程度入れた後 ゆっくりといつも通りクラゲに しようとしたが泡が大きすぎて うまくいかない… すると兄ちゃんがおもむろに 手を出してキュッとしぼった。 ぼくよりも大きい手は 大きいクラゲを作り出した。 うわぁぁあ!! ぼくは心の底から感動した。 こんなに、こんなにも大きいものが できたのか、と。 この感動はきっと忘れないだろう。 ぼくはこのクラゲを心に焼き付けて 感動したままお風呂からあがった。 そしてお母さんに お風呂が遅すぎて怒られた。 次の日、 ぼくはもうくらげを作ってはいなかった。 次の敵は そう…透明でまん丸なあいつに 変わっていたのだ…
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