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《惑星ジェニス降下二分前。各員、大気圏突入に備えろ》
漆黒の海
遍く星々、そして銀河系を浮かべる母なる暗黒の空間
強襲揚陸艇の窓の外を見つめながら、そう古くはない記憶を思い起こす
生物は元来、海から生まれたのだ
訓練兵時代の一般教養にて、白髪の教官が穏やかに解説していた
結局、熱心な彼の語りからは海というものが何なのかは理解できなかった
こうして戦場に身をおくようになってからも、残念ながらそれが何なのかは分からない
その教官や、テイラー大佐は知っているようであったが
格納庫で物思いに耽っていた大佐が、アルコール分に流されて語ってくれたのだ
鋭い眼光で厳しくも、優しく見守ってくれる彼にしては珍しい態度だった
なんでも、十年ほど前に船団が立ち寄った惑星に存在していたらしい
星全体を埋め尽くす勢いの、膨大な量の水
それは美しい星だったと
虚構を見つめる大佐の瞳は、当時を思い出していたのだろうか
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