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途中からあふれ出した涙はとめどなく頬を濡らした。
僕の話が終わるまで、
少女は一言も発することなく、ずっと聞いていた。
そして、言った。
「ここはゆいごんの桜。」
少女が木を見上げる。
「桜がさいているあいだ、ここでのこしたゆいごんは…」
視線を落として、僕を見る。
「かならずあいてにとどく。」
遺言の桜。
そう。その伝説を聞いたとき、僕の決心は揺らいでしまった。
だから、僕はやってきた。
最期に一言、彼女に伝えられるならと。
一縷の望みをかけて。
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