冷凍パスタの女

5/5
14人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
*** 「おかぁさぁん! おーそーいっ」  おかめお面の少年が、坂の上で力いっぱい叫んでいる。その頭の上を、薄紅の花弁がひらひら、ひらひらと後から後から舞い落ちている。  私たちはもう桜に祝福されたものね、と、眩しそうに少年と桜を見る夫に語りかけた。 「……そうだったなぁ」  今頃になって気もそぞろになってしまった夫の手から、空になった弁当箱を奪い取って。  相変わらず料理の苦手な私は、大切な二人のために、またすぐにやってくる今晩の夕飯を、苦心して考えることにした。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!