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冷凍パスタの女
「お花見弁当のおかず、どれが一番おいしかった?」
と息子に聞くと、「パスタかなぁ~」となおざりに返事が返ってきた。
うーん、やっぱりか……と、私はうなだれる。早起きして気合を入れて作った唐揚げも、可愛くラッピングしたサンドイッチも、彼の琴線には触れなかったようだ。顔には出さずに落胆する。主婦歴は年々長くなるのに一向に上達しない料理の腕では、進化し続ける最近の冷凍パスタに勝てる気がしない。
息子は、数ある屋台の中から、なぜそれを気に入ったのかわからない不気味なおたふくのお面を「1つだけ! 1つだけだから!」と選んで買った。大爆笑している小学生男子を横目に、なんでこんな風に大きくなっちゃったのかなーと昔を思い出して遠い目になる。赤ちゃんのころは、おいち、おいちってお母さんのご飯を一生懸命手づかみで食べてくれていたのに。そんな昔話をすると怒るようになってしまった、いまや立派な少年だ。
「おーい、急いで帰るぞ~。駐車場、すごい渋滞だ」
「待って、お父さーん! これ見てー!」
大きなランチセットを持って先をずんずん歩く夫の後ろ姿に追いつこうと、今年10歳になる息子が駆けていく。
拡大縮小したみたいな二人の背中を追いながら、私はわざとゆっくり、頭上を覆う雲のような満開の桜の枝を見渡した。
まったく、男たちは情緒がない。
でも、それがいかにも夫とその遺伝子を引き継ぐ子らしくて、私は10年前と変わらない桜に微笑みかけるのだ。
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