5人が本棚に入れています
本棚に追加
◇
成司は、掛け時計へと目をやった。
休日出勤の、たった一人しかいない会社のオフィスで、何度そうしたことか。
天井の照明は成司の頭上のものしか点いていない。節電だ。おかげで目を向けた掛け時計に届く光はおこぼれ程度。その微かな光を頼りに短針と長針の位置に目を凝らすと、
「七時」
その時刻だった。
成司はため息をついた。その息が忙しく動き続けるコピー機にかかる。
午後七時と言えば、通常の勤務でも退社できる定時を越えた時刻。労働時間にうるさい昨今、定時に帰れる日もこの頃は以前より増えてきたと言うのに、
「どうして今日にかぎって、俺はまだ帰れないんだよ」
今日は休日なのに。父の日なのに。
成司はまたため息をついた。コピー機はそんなことなどお構いなしに、成司に命じられたルーチンワークをこなしている。
最初のコメントを投稿しよう!