罪と罰

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** 翔ちゃんからプロポーズしてもらったものの、法律上、女性は離婚してから100日間は結婚できない。 そうでなくても、「離婚しました、はい再婚」というのはさすがに気が引ける。 私がそう言ったら、「まずは一緒に住もうか」と翔ちゃんが提案して、部屋探しから始めることにした。 とは言え、翔ちゃんは実家だし、私の家は二年契約でまだ半年以上残っているから、のんびり探す予定だった。 でも、翔ちゃんの休みの日にさっそく不動産に行ったら、理想通りの2LDKがすぐに見つかってしまったのだ。 場所はこの町から電車で2駅、駅からは徒歩10分ほどで、しかも翔ちゃんの職場から5分とかからない。 翔ちゃんの実家も徒歩圏内だ。 大通りに面した、築年数にしてはかなり綺麗な6階建てのマンションで、道路を渡った斜め前はコンビニ。 そして、家賃も考えていた範囲内で収まる。 これ以上の優良物件を見つけられる気もしないから、その場で仮押さえした。 そんなわけで、家はあっさり見つかったものの、不安なのは私の両親のことだった。 引越しするなら報告しないわけにもいかないし、本契約する前に話さないと。 けれど、つい先日離婚した娘が別の男性と同棲すると言い出すわけだから、いい反応なんて全く期待できない。 猛反対だけならまだしも、下手したら、別居や離婚の原因も翔ちゃんのせいにされて、同棲どころか仲を引き裂かれて……。 「大丈夫だって。てか、反対するなら誘拐する、って脅すから」 翔ちゃんはふふんと笑ってみせるけれど、私はちっとも大丈夫じゃない。 翔ちゃんと一緒に実家に向かった日は、ひょっとしたら、別居や離婚の報告の時よりも憂鬱な気持ちだったかもしれない。 しかし、両親の反応は、私の予想とは少し違うものだった。 話も聞かずに頭ごなしに反対する、という昔の姿勢は全くなかったのだ。 私の離婚を受け、両親も何か思うところがあったんだろうか……そう思うと申し訳ない気持ちでいっぱいになる。 もちろん、翔ちゃんが毅然とした態度で話をしてくれたお陰でもあったのだ。 「水瀬(みなせ)くんが、うちの理子と本気で結婚したいと思ってくれているのはわかった。でも、一緒に住むのは結婚してからじゃダメなのかな」 とやや渋い顔をした父に、翔ちゃんが 「人の心はそんなに簡単じゃありません。離婚で傷ついている今、どうしても傍にいてあげたいんです。だから、お願いします!」 と頭を下げてくれた時は、その場で思わず泣いてしまった。 でも、私自身は『離婚で傷ついている』なんて口が裂けても言っちゃいけない。 離婚は『罰』じゃない。 私の最後の『罪』だから──。 とにもかくにも、何とか両親の承諾を得て、マンションを本契約。 1ヶ月後、4月の終わりには入居することが決まった。
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