花は咲いても君はいない

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今日の天気は雪。 朝からずっと、止むことなく降り続いていた。 俺は普通の人間よりも体温が高いから、そこまで寒くは感じないが、今すれ違ったサラリーマンをはじめ、道行く人全員が顔を真っ赤にして寒そうにしている。 この分じゃ、アイツも顔を真っ赤にして俺を待っているのだろうか。 いや、そもそもアイツも俺と同じで普通じゃないから、寒さなんて関係ないか。 それに、俺と一緒にいる時のアイツは、いつもの赤い顔をして、好きですオーラを振りまいているんだった。 初めてあった時からそれは変わらなかった。 そんなアイツを鬱陶しいと思っていたはずなのに、いつの間にか可愛いと思うようになった。 いつも俺の前に現れるアイツから逃げていたはずなのに、俺から探すようになっていた。 アイツのことを好きだと自覚したのも、今日のような雪の日だった。 誰もいない公園で、随分積もった雪の上に倒れて笑っているアイツ。 何をしていると話しかけたら、答えることはなく、俺を引っ張ってきた。 ふわふわな雪の感触を背中に感じ、右手にはアイツの温もり。 ふと呟かれた愛してるの言葉。 何度も聞いていたはずなのに、なんだか特別に思えて、唐突に、ああ好きだなと思った。
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