空っぽの日常

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「あんまり無茶しないでくださいね」 心にでもないセリフ。この3年、自分でも驚くぐらいに本音と建前を使い分けられるようになったと思う。 だってこうすれば物事が穏やかに進んでいく。 「ああ、分かってる。相変わらず優しい言葉をかけてくれるんだね。梨央は」 ほらね。一段とまた穏やかな表情になった宗一郎さんに安堵する私。 彼は普段感情をなくしたように冷血な目をしてるから、正直何を考えているのか分からない。 だから本音が分からない分、私は良妻な妻を演じなきゃいけないのだ。 「…じゃあ、今からご飯作るね。宗一郎さんはここでゆっくり待って……」 「梨央」 言い終わる前にごつごつとした彼の手が伸びてくる。グイッと体を引き寄せられた私は目の前のガッチリとした体に抱きしめられた。 「先に梨央が食べたい」 そんなセリフにドキリと顔を上げる。 「宗……」 「朝から誘うようなセリフを吐くお前が悪いよ」 頬を撫でられて、ギラリと光る見つめられた私は有無を言わせず唇を塞がれた。 そしてあっという間にその場に体を沈められ、深い口づけを与えられた私はいつものように感情をシャットアウトした。 例え嫌だと言っても彼の意思は変わらない。 むしろ激しく抱かれ、彼の強い愛情に支配されるだけなのだ。 だから私は… 「今日は優しくしてください、ね?」 今日もまた彼を受け入れる。 さんさんと降り注ぐ朝日の中で。 快楽と言う苦痛に溺れながらひたすら自分の悲しみを心の奥底にしまい込んでいく。 泣いたって誰も助けに来てくれない。 もう…、涙は出ないのだから……
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